2023年10月にリニューアルを迎える品川運輸のWebサイトでは、あらたなサステナビリティ方針として4つの重要課題を掲げています。これらの策定にあたり、社内の10人のメンバーがSDGsについて学び、考えるためのプロジェクトを1年間にわたって実施しました。わたしたち品川運輸が、社会や環境のために何ができるのか、プロジェクトを通じて話し合った内容を4人のメンバーが振り返ります。
「ごみはごみじゃなくて資源なんだな、
と感じることができるようになりました」
-品川運輸内でSDGsのプロジェクトがはじまった経緯を教えてください。
久我 直也(以下、久我) プロジェクト自体は1年前の2022年5月頃にはじまったのですが、遡ると5年ほど前から、なにかSDGsに関する取り組みを会社で実施できないだろうかと、社長を中心に話をしていました。今回、プロジェクトを伴走いただいたSDGsファシリテーターの方とのご縁がきっかけとなって、具体的な取り組みとしてスタートすることができ、社内の10名のメンバーと一緒に毎月2回勉強会を実施しました。
総務部 課長久我 直也
2016年入社 総務、経理の業務を担当 親子二世代で品川運輸に入社をしています
-プロジェクトメンバーはどのように決まったのでしょうか?
久我 現場で収集を担当するドライバーや、事務、営業管理、工場勤務のスタッフなど、なるべくさまざまな部署のメンバーに参加してもらいました。業界柄女性は少ないのですが、それでも3名の女性社員に参加してもらっています。こういう取り組みは品川運輸としてはじめてだったので、なるべく従業員の視点から、自分たちの仕事について考えながら進めて欲しいという役員の意向もありました。
-どのような内容の勉強会だったのでしょうか?
久我 「SDGsとは?」といった基本的な内容はもちろん、まずは我々自身の仕事について知ることからはじめました。社歴が長いスタッフでも、自分の部署以外ではどんな仕事をしているのかわかっていない現状があったので、まずは自分たちの仕事について十分に理解し、そこからSDGsの考え方を当てはめて行こうと考えました。
-他の部署の仕事についてあらためて知り、どのように感じましたか?
水口愛子(以下、水口) わたしは事業系の収集を担当する環境部に所属しているので、一般家庭のごみを収集している清掃部の業務内容を知り、あらためて地域住民の方々にとても貢献している仕事なんだなということを感じましたね。同時に自分が取り組んでいかなければならない課題も見えてきたように思います。
環境部 営業管理課水口 愛子
2021年入社 産業廃棄物運搬処分に関わるあらゆる管理業務を担当
中野利光(以下、中野) 僕たち清掃部の場合は、普段から収集したごみを運搬しに工場には行っているものの、どんな機械があって、中間処理のためにどんなことが行われているのかは知らなかったので、今回学ぶことができてよかったなと思います。環境部の取引先の多さにもおどろきましたね。よくこれだけの量を把握できているなと。
清掃部ドライバー中野 利光
2010年入社 無事故歴を10年以上継続し、リーダーとしてチームを引っ張ります。
伊藤 雅基(以下、伊藤) 本社と工場は場所が離れていますし、たまに会ったとしても挨拶するくらいで、ゆっくり話すこともできなかったので、こういった機会に腰を据えてゆっくりとみんなが考えていることを聞くことができてよかったですよね。
環境部 営業管理課 主任伊藤 雅基
2018年入社 前職の営業経験を生かし、主に管理会社・お客様との折衝を担当。
水口 ごみはごみじゃなくて資源なんだな、と感じることができるようになりました。ただ捨てて終わりではなくて、ペットボトルだったら原料化されて次の製品になったり、燃えるごみはその後エネルギーになったり。そういった勉強ができるのは品川運輸だからこそですし、とてもおもしろかったです。
それに、それぞれの仕事がつながった感覚がありましたよね。自分のやっている仕事は、あの人に引き継ぐためだったんだなと、そんなことを思いながら仕事ができるようになりました。
「誇りの持てる、夢のある仕事なんだなと、
自信を持って思うようになりました」
-品川運輸の仕事をSDGsと関連づけるにあたって、どのような議論がありましたか?
久我 品川運輸の業務を、社会や環境に与える正の影響と負の影響の視点で分類してみました。正の影響は、私たちが事業を通して実施している分別と中間処理、リサイクル。負の影響については、日々トラックが90数台走っているので、CO2の排出量や、交通事故のリスクなど。そうやって、SDGsの17の目標と169のターゲットを、我々の業務と照らし合わせていくような作業を実施しました。
-今回のプロジェクトをきっかけに策定されたサステナビリティ方針では、4つの重要課題が掲げられています。これらはどのように決められたのでしょうか?
久我 先代から続いている企業理念があるので、それを引き継ぎながら、今回学んだSDGsと照らし合わせた内容を、いかに言葉にしていくのかを議論していきました。話し合う中で、「本当にできるのかな…」という声もあったのですが、品川運輸があるべき姿を思い浮かべながら、具体的な取り組みとしてまとめていきました。
水口 人員が足りないとか、社員全員には響かないんじゃないだろうかとか、ついついできない理由ばかり考えてしまいがちですが、今回のプロジェクトでは自分たちがやりたいことはなにか考えるようにしていましたね。
-普段の仕事の意識は変わりましたか?
中野 持続可能性という視点であまり仕事を考えてこなかったというか、淡々とこなしていた毎日の仕事には、こんな意義があるんだなということを再認識できました。そこからさらに「こんなことができるんじゃないか」など、いろいろなアイデアをみんなで持ち寄ることができるようになったと思います。正直なところ、「ごみを集める仕事に夢なんかないよな」と思っていたんですが、こうやって深く考えてみると、誇りの持てる、夢のある仕事なんだなと、自信を持って思うようになりました。
あとは、仕事に関わらず「これって意味あるんですか?」と考えるようになりましたね。持続的な生き方なのか?とか考えたり(笑)。
水口 お互いの言動を見て、「それ、SDGsだね」とか言い合ったりしていますよね(笑)。
「一貫してリサイクルに取り組んでいかないと、
良かれと思って実施していることが
空回りになってしまいます」
-プロジェクトを経て、現在感じている課題はありますか?
伊藤 廃棄物のリサイクルについての内情が、あまり一般的に知れ渡っていないという課題はあると思いますね。私はまったく別の業界から転職してきたので、品川運輸に入るまでは、リサイクルがどうやって行われているかについてまったく知りませんでした。
それでも世の中ではSDGsの必要性が謳われていて、ストローを紙に変えるなど、プラスチックをなるべく使わないようにしている。でも、結局のところごみとして出されるときに、それらが混ざってしまうとリサイクルできなくなってしまいますし、分別に余計なコストがかかってしまいます。それならすべてプラスチックでつくって回収した方がリサイクルしやすいんですよね。
我々のようなごみを収集する側と、中間処理やリサイクルする側、そしてメーカーや製造会社などのつくる側がコミュニケーションをとりながら、一貫してリサイクルに取り組んでいかないと、良かれと思って実施していることが空回りになってしまいます。今後SDGsの活動がもっと盛んになることで、より全体的にこの考え方が浸透していくといいなと思いますし、横のつながりが少ない業界だと思うので、風通しをよくしていきたいと考えています。
水口 確かに、品川運輸に入ってから自分の地域の収集所にはいろんな業者の方が来ているんだなということをはじめて知りました。普段散歩している時も、パッカー車に書かれている業者さんの名前を必ず見るようになりましたね。元々意識してごみを分別していましたが、もっときれいにごみを出さなくちゃなって思うようにもなりました。
伊藤 建物のごみ置き場とかも見ちゃいますよね。
水口 そうそう。自分が契約をとったお店のごみ箱とか、綺麗に出しているかなとか見に行ったりしますね。
中野 僕は元々外資系の会社で働いていたので、品川運輸に転職してきたときは、右も左もわからなかったですし、この業界自体が未知でしたね。いまでは大変だなと思いながらも毎日楽しく働いていますし、収集業のことを知ってもらうにはこっちから発信していかないといけないと思っています。SDGsについてはもちろん、さまざまなことを勉強すればするほど、さらにいい会社にしていかないといけないなと感じています。
「資源を循環させるためにできることを、
小さいことからやっていけたら
いいんじゃないかなと思います」
-最後に、ご自身が考える「いいサイクル」のために、今後取り組んでいきたいことなどをお聞かせください。
久我 「サイクル」という言葉を調べてみると、「状態が変化し続け、再び最初の状態に戻ること」という意味なんですよね。つまり、資源が少なくなってきているからこそ、サイクルが求められるということだと思うので、100%戻すのは不可能だとしても、少なくともそれに近づくようにリサイクルをして、資源を循環させるためにできることを、小さいことからやっていけたらいいんじゃないかなと思います。
水口 最近は、「ペットボトル To ペットボトル」のような、リサイクルの取り組みを実践している企業も増えていますよね。分別やリサイクルについて意識しながらものを買ったり、ごみを出したり、ごみをごみと捉えちゃいけないという意識をみんなが持てるようになるといいなと思います。
中野 リサイクルすることを前提に、分解しやすくつくられているものが増えるといいですよね。アップサイクルのように、回収したものをさらにいいものに変えていくという考え方もあるから、そこに価値を見出せれば、もっとビジネスとして成り立つんじゃないかなと思います。
SDGsは2030年までの目標なので、今後更新されていくと思いますし、何が正しいのかは時代の変化に合わせて変わっていくので、自分がどうしていくのかを考え続けて、関心を持ち続けることが大事ですよね。せっかくこういった学びの機会をもらったので、仕事を通してできることをやっていきたいなと思っています。
伊藤 品川運輸の業務は、ごみを収集してくれる現場のドライバーはもちろん、工場で分別してくれる方や、お客さまとの調整をする方もいて、人がいないと回らない、関係性があってこその仕事だと思います。今回のSDGsプロジェクトを通して他の部署の仕事が垣間見られたので、お互いの状況をわかった上でコミュニケーションができるようになったと思います。これからは、品川運輸の中のサイクルをさらに良いものにしていくことを目標にしていきたいと思います。
いいサイクルってなんだろう。
総務部 課長
久我 直也
環境部
営業管理課 主任
伊藤 雅基
環境部 営業管理課
水口 愛子
清掃部 ドライバー
中野 利光
執筆・編集・写真
フリーランスライター / エディター
堀合 俊博
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フォトグラファー
川島 彩水